ある少女が長年の苦難を経て花街一の芸者に育つまでを、ハリウッド式に豪華絢爛たる映像絵巻として描写
ストーリー:漁村の貧しい家に生まれ、9歳で花街の置屋に売られた千代(チャン・ツィイー)。置屋には花街一の売れっ子芸者、初桃がいた。奴隷のような労働や初桃からのいじめに耐えながら千代は、会長と呼ばれる紳士に優しく声をかけられたことに希望を持ち、いつか自分も立派な芸者になり、会長から愛されることを望みだす。15歳になった千代は一流の芸者、豆葉(ミシェル・ヨー)に才能を認められ、彼女のもとで“さゆり”と呼ばれる芸者となり、花街一の芸者の座を目指す・・・。
出演:チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、コン・リー、ケリー・ヒロユキ・タガワ、ケネス・ツァン、マコ岩松、渡辺謙、役所広司、桃井かおり、工藤夕貴、大後寿々花
★★★★★ とても綺麗
とっても綺麗な映画で感動しました。おそらく少し年を経たさゆり自身の語り手による進行は、映画『愛人』を思い出させます。女性の心情と日本の風景の美しさが一体となり、素晴らしい作品に仕上がっています。この映画の世界に対して、日本のリアルな文化と違うと不満を言うのは、無粋だと思います。ドキュメンタリーではなく、映画だからです。事実を追いすぎるより、より美しく仕上げることが優先されるべきです。ここまで日本の風景を美しく表現した映画があったでしょうか。日本映画のそれは、スクリーンの中では晴れていても曇りの日のように、明るさ、美しさに欠けています。晴れた日の美しい日本の風景を世界に発信してくれた製作者の方たちに敬意を表したいです。
★★★★☆ 真摯に描かれた日本
原題が、Memories of Geishaである。さてこれはどのような「日本情緒」溢れるゲテモノ映画になっているかと、先入観を持って見始めたが、意外にまともな映画だった。それどころか1930年代の花街をできるだけ忠実に再現したという点から見ると、凡百のドキュメントよりも貴重かもしれない。確かに着物の着崩し方や、日本人らしからぬ激しい感情表現などはあるが、それは些細なものだ。芸者うんぬんを別にして純粋に見ても、芸術的な映画に仕上がっている。監督のオーディオコメンタリーを聞くと、日本人が他人の心を思いやる気持ちを重要視している点を説明していたり、ラストシーンでは撮影スタッフが思わず貰い泣きしていたというエピソードを話したりしており、日本人的な繊細さを意識して造られた事が分かった。古の日本を外人から教えられる、そんな映画だ。
★★★☆☆ GEISHA人形
実在の人物をモデルにした芸者の一代記。舞妓と芸妓の違いもわからない現代の日本人にとっては、これを観る感覚は案外アメリカ人と変わらないのかもしれない。同じ「逆輸入」のカタチで観た「ラストサムライ」より、英語劇というスタイルに違和感を感じたのは、より泥臭い世界を描いていたからだろうか。チャン・ツイィーをヒロインに選んだ監督の気持ちはよくわかる。彼女ほど東洋と西洋のエッセンスを兼ね備えた完璧な女優はなかなかいないだろう。子役の虐げられるシーンもあいまって「おしん」を思い出した。また、コン・リーはさすがだが、桃井かおりの存在感には嬉しい驚きだった。とても面白く観たが、遊園地の乗り物に乗ったみたいに、ああ面白かったという感じで、終わってみればガツンと心に残るものがなかった。それは、この作品がうまくまとまったプロモーションビデオのようで、あくまでそれぞれのエッセンスをなぞるに留まっていて、生きた人間の生々しいメッセージを込めるに至っていないからではないだろうか。そこでは誰もがお人形のように作り物めいて見えた。しかし、それこそが「芸者」なのかもしれない。
作品の詳細
作品名:SAYURI |
原作名:Memoirs of a Geisha |
監督:ロブ・マーシャル |
脚本:ロビン・スウィコード |
製作:スティーヴン・スピルバーグ |
原作:アーサー・ゴールデン『さゆり』 |
公開:アメリカ 2005年12月9日、日本 2005年12月10日 |
上映時間:146分 |
制作国:アメリカ |
製作費:8500万ドル |
興行収入:1億6200万ドル |
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