スマトラ海峡から3150キロ沖。“すべて失った・・・すまない”という男のつぶやきが響く
ストーリー:ことの起こりは8日前。インド洋をヨットで単独航海中の男は水音で眠りから覚める。気が付けば、船室に浸水が。海上を漂流していたコンテナが激突し、ヨットに横穴が開いてしまったようだ。航法装置は故障し、無線もラップトップも水浸しで使い物にならない。しかし、この災難は始まりに過ぎなかった。雨雲が迫り、雷鳴がとどろき、やがて襲いかかる暴風雨。嵐が去った後に、男は過酷な現実に直面する。ヨットは決定的なダメージを受け、浸水はもはや止めようがない。ヨットを捨てることを決意した男は食糧とサバイバルキットを持って救命ボートに避難する。ここはいったいどこなのか? 助けはやってくるのか?ボートへの浸水、サメの襲撃に加え、飲み水や食糧は底を突き、危機的な状況は続く。ギリギリまで踏ん張ったものの、望みは確実に断たれようとしていた。運命に見放されようとしたとき、男は初めて自分自身の本当の気持ちと向き合う事になる。そして、一番大切な人に向けて読まれるかどうかもわからない手紙に、偽りのない気持ちをつづり始める・・・。
出演:ロバート・レッドフォード
★★★★★ 現代版『老人と海』・レッドフォードの完璧な演技と驚異の映像
ヘミングウェイの『老人と海』は、体力は減衰しても、智恵を得た”老人”という最強の人間と、自然界で最も豊穣かつ凶暴な海との格闘を通じた、人間存在の高次なありかたを示した。『オール・イズ・ロスト』は、このヘミングウェイの傑作と同じように、海との格闘を通した老人の智恵や絶望との対峙を描く。引退後の豪華ヨットによるクルージングというのは、多くの米国人の引退後生活の夢だろう。その夢を実現した、一人の老人(といっても体力や気力は凄い)の物語。突然、中国製の浮遊コンテナがヨットに衝突し、浸水する。さらに天候悪化に見舞われ、ヨットを失い、飢えや乾きとの闘いを強いられる。これらの災難にただ一人で、工夫をこらし立ち向かう姿が凄い。セリフは全くないにもかかわらず、レッドフォードの演技は完璧だ。水が海水に汚染されて怒りにうちふるえるシーンもリアルだ。老人の幻想や夢のシーンも素晴らしい。海底からのカメラによるショットもときどき挿入される。サメの群れのシーンも美しくも残酷であった。『老人と海』を始めて読んだ感動が、この映画を観てよみがえってきた。生きるとはなにか?何のために生に執着するのか?すばらしい作品だ。
★★★★☆ 直面する危機
海難者の物語。登場人物は老いたロバート・レッドフォードのみ。主人公の回想シーンがないために、彼が誰なのか、どういう人柄だったのか、海に出るまでの境遇がまったくわからない。当然、回想がないから彼に関わる人物も登場してこない。画面に現れるのは、終始、リアルタイムの彼だけである。そこがいい。そこがリアルを醸し出す。余計な演出がないことが映画との距離感を近づける。いま、我が身に起こったかのような感覚を抱かせる。サバイバル映画はこうでなくてはいけない。徹底した現実感、これがすべてである。
作品の詳細
作品名:オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜 |
原作名:All Is Lost |
監督:J・C・チャンダー |
脚本:J・C・チャンダー |
公開:アメリカ 2013年10月18日、日本 2014年3月14日 |
上映時間:100分 |
制作国:アメリカ |
製作費:850万ドル |
興行収入:1300万ドル |
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