デンゼル・ワシントン主演でマルコムXの生涯を描いた伝記ドラマ
93年公開時に、ブラック・カルチャーがファッションとしてブレイクするきっかけともなった話題作
ストーリー:1943年、ボストンから物語は始まる。スラム街に住む18歳の少年マルコム・リトルは、やがて強盗事件で逮捕される。刑務所の中で彼は、ネイション・オブ・イスラム(ブラック・ムスリム)の教えに開眼しマルコムXと改名する。52年に出所した彼は、ブラック・ムスリムのスポークスマンとなり、白人に対して過激な行動を重ねる。しかし、師と仰いできたブラック・ムスリムの指導者イライジャの堕落した私生活に失望し、彼は教団から脱退、自らの理念によって黒人解放運動を率いる決心を固めるが・・・。
★★★★★ 人種差別はなくならない
人類に根強く残る人種差別や白人至上主義に肉薄し、ピンポイントで迫る素晴らしい映画です。またマルコムXは、表向き教団内部での対立抗争により殺された事になっているが、政府関係機関が介在しているのは間違いない。白人至上主義とアメリカ内部に存在する、限りなく深い闇に迫る問題作と言えるでしょう。
★★★★★ 前半はまるでミュージカル&ゴッドファーザーのブラック版、後半は貴重なドキュメント
マルコムXの生涯と思想の意義は語るまでもないと思うので、映画として以下にすばらしいかを。前半のギャング時代のマルコムとその周囲の黒人たちは、まるでミュージカルのようにハーレムで踊りまくり、ストーリー展開はゴッドファーザーも真っ青のギャング映画。(もちろん、スーパーフライなどかっての黒人ギャング映画の要素もたっぷり)音楽の使い方もしゃれていて、とにかく前半はスリルと映画的エンターテイメントに満ちている。そして、後半の刑務所でのブラック・モスレム(黒人回教)への覚醒、黒人運動家・思想家として事故を高めていく過程はもちろん感動的。その過程で、黒人運動を乗り越えた普遍的な人権運動・反差別運動、そして黒人そのものの意識覚醒を目指す運動をめざした途端、アメリカ政府からも、そしてかって属していたブラック・モスレム双方から追い詰められ暗殺されるシーンは悲劇そのものだが、一生を通じ前進し続けた姿は素晴らしいとしかいいようがない。そしてラストシーンの、マルコム自身のキメ台詞は、たった一言なのに異様な感動を呼び覚ますので、絶対見逃さないでほしい。
★★★★★ 何故 デンゼル・ワシントンはオスカーを取れなかったのか?
スパイク・リー監督作品の中で最高傑作だとおもいます。冒頭でロス暴動のきっかけとなった、キング氏の暴行シーンが流れ、そのあと星条旗が燃やされるシーンになります。他のアメリカ映画で星条旗が燃やされたことがあったでしょうか?デンゼル・ワシントンがオスカーを取れなかった理由も解りますが、『トレーニング・デイ』でとるより、この作品で取ってほしかった。
★★★★★ 黒い殉教者
マルコムXの自伝をベースにしているので、その人と成りがよく分かる。ひとりの人間として、その光と陰を丹念に描いている。まずこの点で見る価値のある良い作品になっていると思う。しかし、この作品で浮き彫りになってくるのは、彼の半生を形作り、またその運命を決定的なものとした、“宗教”のパラドックスではないだろうか。結局、その信仰と解放運動において純真無垢だった彼は、その清廉潔白な意志と存在がNOI教団の邪魔となってしまう。犯罪者だった彼を勧誘し、その才能と情熱を利用し、支持を得て、入信者を獲得し、拡大した組織。その中で始まる権力争いと、教祖の強欲な本性の暴露。どこの宗教でも組織でもあるような話だが、作品中に漂う腐臭には吐き気を覚える。そうして教団から離脱したマルコムXは、以前より穏健で寛容な路線にスイッチしていくのだがそこで教団に暗殺される。その背景に国家権力があった事は容易に想像出来るであろうし、作品もそれを示唆するような部分があると思う。こういった点で、スパイク・リーはマルコムXの人物を描くと同時に、宗教の持つ矛盾や偽善を描きたかったのだろう。様々な妨害や迫害にあっても、それでも強力に黒人のアイデンティティや公民権の獲得のために闘ったマルコムXは(そしてキング牧師も)殉教者となった。この作品はまさにその受難の一部始終を描いている。その悲劇的エンディングシーンでは、史実とは違い、最後を看取るのが妻であるのもそんな意図があるのではないかと思えるのだが・・・要するに、本人はムスリムではあるが、キリスト教的な示唆や演出を感じ取れるのである。また、個人的にアメリカという国が好きになれない理由が、この作品で再認識できた。
★★★★☆ マルコムX
マルコムXの自伝を映画化したもので、よくできている。白人はアフリカから黒人を拉致しレイプし嬲り殺し奴隷にし、文化も歴史も誇りも言葉も名前も奪った。その罪を真正面から見ずに嘘やごまかし、偽善行為でやり過ごしていた白人たちにその悪魔的行為の歴史を真正面から糾弾し偽善や嘘をあばこうと戦ったヒーローの映画である。彼の人生そのものが白人たちの罪の証明なのだ。彼の母には白人の血が半分流れている。白人のレイプでうまれたからだ。彼の父はKKKの白人たちに殺され、母親は気を病み、最終的に一家は離散する。非常に優秀で弁護士にもなれたであろう人間がチンピラにしかなれない。数学者になれたかもしれない才能の持ち主がヤクザものにしかなれない。そんな社会に対する怒り。偽善や嘘でごまかし自分らの罪を見ようとしない白人たちへの怒り。その非人道的で悪魔的な罪への怒り。彼は決して金や女や地位や名誉で買収できない、怒りをもったアメリカ社会の糾弾者となった。最終的に彼は本当の信仰にふれ宗教者として人間として深みを増していった。映画としてとても楽しめたが、自伝を読んだものとして少し残念な点があった。ショーティの人物描写。彼の人生で重要な役割を果たした弟が出てこない。アーチーとの再会の場面でのせりふが改悪されている。等々あったが、映画にするには必要なことだったのだろう。オリジナルの自伝を愛するものとして星ひとつ引いたが、役者の名演もありすばらしい作品となっている。
★★★☆☆ ドキュメンタリー的作品か。歴史を知るための教養的作品。
マルコムXという時代の寵児となった、ある黒人の生涯を描きます。黒人の解放を訴えた人物なのですが、荒れていた前半生、宗教家として、民族解放を訴えた後半生、そして暗殺される最後まで余すところなく、描きます。そのため、やや展開が重いところもありますが、前半と後半がよく対比されています。文献等を読むと、かなり、過激な論戦を張った、黒人至上主義の人物とされていますが、映画では、高潔な真っ直ぐすぎる人物として描かれています。真実は分かりませんが、敬意を払われる一面のある人物だったのかなぁ・・・と思います。最終的に、この人物は、腐敗した黒人解放運動グループに暗殺されます。解放グループも殆どは腐敗し、純粋な人間は、煙たがられる…空しさを感じました。
★★★☆☆ 深い
人によって感じ方がかなり別れる映画だと思います。でも、是非観て欲しい映画です。きっと何かを感じとって、自分を見つめなおすきっかけになると思います。
作品の詳細
作品名:マルコムX |
原作名:Malcolm X |
監督:スパイク・リー |
脚本:スパイク・リー、アーノルド・パール |
公開:アメリカ 1992年11月18日、日本 1993年2月20日 |
上映時間:202分 |
制作国:アメリカ |
製作費:3500万ドル |
興行収入:5500万ドル |
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