何不自由なく育った2人の若者がなぜソビエトのスパイとなったのか?
ストーリー:1970年代のアメリカ。神学校を中退したクリス(ティモシー・ハットン)は、父親のつてで防衛産業の大手会社に職を得た。やがて、真面目さを買われて極秘機密書類を扱う部署に配属された彼は、資料を通して国家政治の裏の部分を知り憤りを感じていく。そしで彼は、麻薬の密輸に手を染めている幼馴染みの親友ドールトン(ショーン・ペン)を誘い、アメリカの最高機密をソ連へ売ろうと計画する。こうして、ソ連大使館員との闇取り引きを始めた彼らは交渉を重ねるごとに巧みになり、莫大な報酬を懐に収めていく。しかし、クリスは次第に事の危険さに怖じ気づき、足のつかないうちに手を引こうとするのだが・・・。
出演:ティモシー・ハットン、ショーン・ペン、パット・ヒングル、ジョイス・ヴァン・パタン、リチャード・ダイサート、プリシラ・ポインター、ドリアン・ヘアウッド、ロリ・シンガー、デヴィッド・スーシェ
★★★★★ 物語はともかく、「不滅の名演」である
この作品は、書物(日本語の小説、英語の原点版)でも読んだし、VTRの時代から何回か見ている、私にしては珍しく好きな作品である。日本の映画のように、演技や演出の「時間的ズレ」などが感じられず、「本当の話か?!」と、思わず引き込まれるのだ。もちろん、私の尊敬するパット・メセニーが音楽を担当していることも好きな理由の一つだ(サウンドトラックのLPも持っているし、カセットに録って車でも聴いているほどの入れ込みよう!)。中でも面白い演出がされているのは、ロシア大使館の外交官に機密文書を渡す時、通行人を装ったロシアの諜報員らに次々とリレーで手渡されるシーンだ。プロのスリ集団もかくの如きか?!と思わされるほどの見事さだ。
★★★★★ This is not America・・・
ショーン・ペンとティモシー・ハットンは、たしか「タップス」で陸軍幼年学校?の生徒でバリバリの愛国者だったのに・・・。ただ目の前に国家機密があっただけでゲームのようにKGBに売り渡しアメリカを裏切っていく。パット・メセニー&デヴィット・ボウイの曲がせつなくて、あまりにもストーリーとかさなるタイトルがまた良すぎ。映画館でも見たのですが、終わってもみんな、なかなか席を立ち上がれなかった。こんな映画は、そうありません。
★★★★☆ 「これはアメリカではない」けれども…
ジョン・シュレシンジャーの映画からは、ある東欧移民の詩の一節を思い出す。それは「私たちにとってのアメリカは、アメリカではなかったけれども」というものだ。アメリカが「夢の国」であればこそ、そこには多くの挫折が生まれている。『真夜中のカーボーイ』がそうであるように、「夢と挫折」はシュレシンジャーのモチーフである。この映画は、私個人が初めて劇場で観たシュレシンジャー作品で思い出深い。高校時代、友だちと観に行ったのだが、映画が終わってもしばらく席から立てず、劇場を出てからもずっと口をきけなかったのを憶えている。これは、「アメリカを売った」二人の青年の物語である。エンディングに流れるボウイ=メセニーのテーマ曲が象徴的だ。「ディス・イズ・ノット・アメリカ(これはアメリカではない)」。逆説的にそれは、イギリス人・シュレシンジャーが第二の祖国・アメリカに託した希望なのだろう。しかし、この映画のなかに描かれたアメリカの理想はひどく屈折したものだ(ティモシー・八ットンはそれを見事に演じているのだが)。いま観てもかなりキツイなあ・・・。
★★★☆☆ 1970年代左翼かぶれの顛末は、、、
若き日のショーン・ペンとティモシー・ハットンが共演した、1970年代政治サスペンスもの。1985年制作。サスペンスとは言え謎解きやスリル中心ではなく、“いいとこのお坊ちゃん(ティモシー・ハットン)”が、米ソ冷戦時代にふとしたきっかけで機密をソ連側に売り、抜き差しならない状況に陥って行くという情報犯罪心理劇(とその顛末)。何不自由ない中流家庭に育った、なまじっか正義感の強い真面目な青年ほど、左翼かぶれになっていった70年代当時のムードがよく出ている。共産主義の実体が暴かれた30年後の今見ると、あの“近代歴史”は一体どう評価すべきなのか、、、という虚しさは否めない。実に地味な映画であるが、当時デビッド・ボウイとパット・メセニーの美しいテーマ曲のプロモ・ビデオがMTVで何度もかけられたせいか、サントラ盤はヒットした。この映画のショーン・ペンは、“町のチンピラ役をやらせたら世界一の男”面目躍如の名演。
作品の詳細
作品名:コードネームはファルコン |
原作名:The Falcon and the Snowman |
監督:ジョン・シュレシンジャー |
脚本:スティーヴン・ザイリアン |
公開:アメリカ 1985年1月25日、日本 1985年10月20日 |
上映時間:131分 |
制作国:アメリカ |
製作費:700万ドル |
興行収入:1700万ドル |
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