世界各国で絶賛された『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が描く、天涯孤独な少年の前に広がる、人生という名の荒野
ストーリー:父親と二人暮らしのチャーリーは厩舎のオーナーのデルから競走馬ピートの世話を頼まれ、家計を助けるため引き受ける。素直で呑み込みが早く、馬を可愛がるチャーリーは、すぐにデルに気に入られた。騎手のボニーからは「馬を愛しちゃダメ。競走馬は勝たなきゃクビよ」と忠告されるが、ピートはチャーリーが唯一心を許せる存在だった。ある夜、チャーリーは男の罵声で目を覚ます。「女房と寝たろ! 」と、以前父が家に泊めた女の夫が怒鳴り込んできたのだ。父は重傷を負い亡くなってしまう。引き取り手のいないチャーリーを心配し、養護施設に連絡しようとする医師を振り切り、彼はピートの厩舎へと走る。だが、レースに惨敗したピートを、デルは売り払うと決めていた。チャーリーは、ピートを乗せたトラックを盗み、かつて優しくしてくれた叔母の住んでいたワイオミングを目指して逃走する。けれども現実は厳しく、チャーリーはあまりに非力だった。残酷にもチャーリーを襲う再びの別れ。チャーリーは孤独を抱きしめ、愛と居場所を求めてひたすら前へと進んでいくが・・・。
出演:チャーリー・プラマー、トラヴィス・フィメル 、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ブシェミ 、スティーヴ・ザーン、エイミー・サイメッツ、ジャスティン・レイン、ルイス・プルマン
★★★★★ 静かないい映画でした。
母親が小さいころに家を出て行き、父親と二人で各地を転々として暮らす15歳のチャーリーですが、車のタイヤを交換しようとしていた馬の調教師(スティーブ・ブシェミ)に偶然声を掛けられ、手伝ったことがきっかけで競走馬の世界に関わります。そして父親が怪我で入院をしたことで、そちらで過ごすようになりますが、馬のピートが処分されそうになったことから、ピートを連れて出ていきます。そしてピートを連れて乾燥地帯の荒野を伯母さんが住んでいるらしいワイオミング州に向かうという話です。チャーリーは年齢的に、社会的養護の対象になりますが、保護施設につなごうとする医師や警官から逃れて、馬のピートと荒野を進みます。途中でトレーラーハウスに住む男性に水をもらったりしますが、その人が親族と話す内容は凄惨なものなので、その人が最近の戦争の帰還兵で、今もその時の記憶に大きく影響されていることが解ってきます。そこにいた親族の若い女性も、他に行く場所が無いため自分の容姿を嘲笑する祖父と暮らしていることをチャーリーに話します。その後、チャーリーが乾燥地帯を抜けて街についても、テントや車で暮らしている人が多く、その中で暮らすようになります。実際に米国では経済が好調でも、家賃もそれに伴い上昇しているところも多く、働いていても家のない人が大量に居て、ホームレス人口は57万人に達しているとの報道もありました。そして偶然炊き出しで出会ったキャンピングカーで暮らすカップルに泊めてもらい、メキシコ人達と働いて報酬のお金を得ますが、泥酔したカップルの男性の方に奪われたので、近くの車からレンチを取りそれで相手を殴りつけて奪い返します。レンチで殴るので、相手が死んでもおかしくない状況です。チャーリーは馬のピートが処分されることを受け入れられない優しさがありますが、ちょっとしたことで自分が他人を死なせかねない暴力行為をすることになります。映画の中で、社会保障に頼るのを良しとしない米国の価値観が、チャーリーをとても縛っていますが、それなりに社会保障の厚い英国出身のアンドリュー・ヘイ監督から見ると、米国自体が荒野と感じられるのかもしれません。先進国はどこも、需要の弱さからデフレ傾向のようですが、何のための供給能力なのかと考えさせられました。
作品の詳細
作品名:荒野にて |
原作名:Lean on Pete |
監督:アンドリュー・ヘイ |
脚本:アンドリュー・ヘイ |
公開:イギリス 2018年5月4日、日本 2019年4月12日 |
上映時間:122分 |
制作国:イギリス |
製作費:800万ドル |
興行収入:200万ドル |
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