ドラマ

存在の耐えられない軽さ

一人の男と二人の女。彼らは“プラハの春”を生きた

人生は私にはとても重いのに、あなたにはごく軽いのね。私、その軽さに耐えられないの・・・

ストーリー:1968年のプラハ。国内外に民主化の風が吹き荒れる中、有能なる脳外科医トマシュは自由奔放に女性と付き合い、人生を謳歌していた。そんな彼の生活が、出張先で立ち寄ったカフェでウェイトレスをしていたテレーザと出会ったことで一変する。テレーザはトマシュのアパートに押しかけた挙句、同棲生活を始めると言い出したのだ。女性と真剣に付き合ったことのないトマシュは困惑しつつも承諾するが、以前から付き合っている画家のサビーナとの関係も終わらせたくない。こうして一人の男と二人の女の微妙な三角関係が始まった・・・。

出演:ダニエル・デイ=ルイス、ジュリエット・ビノシュ、レナ・オリン、デレク・デ・リント、ステラン・スカルスガルド、ダニエル・オルブリフスキー

視聴者の声【Amazonレビューより】

★★★★★ その奥にある真実を探す楽しみ

上映時間は長いが、内容は軽く、登場人物は魅力に満ちている。「軽い」と言ったのは、つまらないということではない。DVDだけをみると、作者の表現したかった真意を誤解する可能性がある。どちらが先でも構わないが、この作品に出会った人は必ず原作にも立ち返るべきだ。押しつけがましいのを承知であえて、そう言おう。 このレビューでストーリーを伝えることは避けたい。とにかく一度観ることだ。哲学、政治、男女関係、人生、戦争、労働、社会、娯楽・・・これら全ての要素がこの作品を構成している。こんなにも重々しそうでありながら、軽い。これは人生を豊かにしてくれる数少ない貴重な作品だ。

★★★★★ 二人の女優の魅力。

1968年にチェコスロバキアで起こった政治改革運動「プラハの春」とその後のソ連の政治介入を背景にした男性1人と女性2人の物語。愛と性が重要な要素だけど、社会に抑圧される個人や恋愛だけではくくれない男女の微妙な関係の深さを考えさせられます。作品は長めですが、何度か観るうちにその深さがじわじわ分かってきました。ハリウッド娯楽作とはまた違ったヨーロッパ映画の底力を感じます。エロティックなシーンが多いけれど、鏡を使ったイメージや写真などが使われているせいか、下品さは感じません。二人の対照的な女性、テレーザとサビーナが興味深い。この二人がお互いのヌード写真を撮るシーンの不思議な魅力が圧巻(それぞれトマシュの妻、愛人と知っていながら)。テレーザの一途で純真で情熱的なところは一歩間違うと、うっとうしいだけの存在。けれど、あどけなさと強さを持ち合わせているジュリエット・ビノシュにはピッタリ。写真の才能を発揮しながら、それが政治に利用されてしまうのが悲しい。サビーナ役のレナ・オリンも魅力的。画家として自立し、自分の個性(帽子のエピソードに象徴される)を認めてくれるトマシュとは対等な関係。余談ですが、サビーナのスタイルの良さはうらやましい。それに対してテレーザは足も太めで腕や背中も少し逞しい感じだけど、それがテレーザの母性を感じさせます。主人公、脳外科医トマシュの行動は典型的なプレイボーイでありながら、サビーナとの親友めいた関係、テレーザとの断ち切れない強い絆など、矛盾をはらみつつ、物語を引っ張っていきます。ダニエル・デイ・ルイスが演じると不思議なカリスマ性を感じます。三人の行く末は、観る人の解釈にゆだねられるでしょう。不思議な余韻が残ります。

★★★★★ 引き込まれる作品でした!!

DVDのケースにも使用されている、床を這う女性に、ベッドに腰掛ける男性というような写真を見ると、何か性愛表現の映画のように思えなくもないが、それは全くの“早とちり”というものである。一人の男と、二人の女を巡る、“揺れた時代の小さな記憶”という体裁の、なかなか深いドラマである・・・1968年のプラハ・・・奔放な青年医師トマシュ、彼の理解者で画家、更に愛人のサビーナ、トマシュが出張先で知り合ってプラハに出て来て居着いてしまい、トマシュの妻になる写真家のテレーザという男女が、揺れる時代を駆けた記録である。自由に発言し、表現する時代の雰囲気を謳歌していた彼らだったが、ソ連軍の侵入という事態が発生してしまう。サビーナはいち早くスイスに脱出する。市民に襲い掛かる軍隊の写真を!撮り続けたテレーザは、国外で公開された自作写真が、当局による市民の取り締まりに利用されている事態に衝撃を受け、トマシュと共にスイスに脱出してしまう。3人はスイスでまた会い、そして別れ、それぞれの道を歩む。時代を覆ってしまった“影”から逃れて各々の幸せを掴もうとする彼らの姿に引き込まれる・・・“プラハの春”を扱い、“ビロード革命”の頃に話題となった本作も、何時の間にか“一昔以上前”のものになった。チェコも今やEUに加盟しようという状態になっている。こんな中だからこそ、時代の光と影に翻弄された人達の姿に、何か考えさせられるものがあると思う・・・。

★★★★☆ ジャケットに騙されるな

ジャケットに囚われると後悔すると思います。『ベティ・ブルー』とかもそうですが、確かにベッドシーンは割とある。でもこの映画の肝は、時代のイデオロギーがいかにふつうの人々の幸せを台無しにしていくかということ。だまされてはいけません。すごく真面目な愛の物語です。さらに言えば、ラストがとっても((( ;゚Д゚)))です。

★★★★☆ こんなにつまらなくない文芸作品は珍しい。

この作品、変な言い方ですが「こんなにつまらなくない文芸作品は珍しい」です。原作は読んでいませんが、たぶん相当に上手に映画化したことが予想されます。基調は軽いのですが、テーマは重く、タフでありながら繊細でもあります。成功作ですから当たり前と言えばそれまでですが、登場人物に捨て駒が無く、主役3人の関係性の表出は圧巻とも言えるものです。チェコ動乱が大きな影を投げ掛けますが、それに頼っていない骨太な創りにも感心しました。それとこれも彼らのその後の活躍を知る者としては当たり前ですが、俳優が素晴らしいです。監督や原作が求める姿になりきっています。

★★★☆☆ 男と女の愛の物語

タイトルは哲学的だが意味は半分以上観ないとわからないノーベル文学賞受賞作の映画化。ジャケ写真はエロだし、始めの方はSEXシーンなど出てきて、「これはワイセツな映画か?」と思ったり、「なんだこれは?何が言いたいのだ?」とも思ったりした。政治的な発言や1968年プラハという舞台設定から、なんとなく「もしかしてこれは・・・・」とも思いながら1時間ほど観ていたら突然、轟音がしてそこから「あ、なるほど。そういう映画か」とわかる。舞台設定こそかわっているが、これは男と女の愛の物語である。しかし、長すぎる もっと短くできるはずだ。

★★★☆☆ ビノシュの魅力

ソ連によって抑圧されながらも、それぞれの人生を賢明に生きる三人が魅力的。人に縛られるのを拒む自由奔放な女、女をみればすぐに手を出す男、そんな男を好きになり縛りたがる女。縛りたがる女は、三人の中で一番一般的な価値観を持っているけれど、決してつまらない女としては描かれていない。ソ連の戦車が来る場面での、全部見ておこうという意気込みでカメラのシャッターをきる姿にほれぼれした。ビノシュはこのころから素敵な女優だったんだなあと思った。

作品の詳細

作品名:存在の耐えられない軽さ
原作名:The Unbearable Lightness of Being
監督:フィリップ・カウフマン
脚本:ジャン=クロード・カリエール
公開:アメリカ 1988年2月5日、日本 1988年10月29日
上映時間:171分
制作国:アメリカ
製作費:1700万ドル
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