ベトナム戦争のぬぐいきれない傷。帰還兵の苦悩と再起を赤裸々に描き尽くす!
ストーリー:1946年7月4日ロングアイランドーアメリカの独立記念日に生を受けたロン・コービック(トム・クルーズ)は、高校卒業後、強い愛国心と将来への希望を胸に海兵隊へ入隊し、ベトナムへと旅立つ。だが戦場は、彼の想像を遥かに超えた、凄惨たるものだった。ロンは混乱のあまり部下を撃ち殺してしまい、敵の凶弾により、自身も下半身不随となってしまう。その後、故郷に帰ったロンを待っていたのは、高まりつつある反戦運動だった。誇りを持って帰国したつもりが、逆に憐れみの目で見られる毎日に、ロンは徐々に自分を見失い、酒に溺れていく。ついに信頼していた家族からも疎外された彼は、メキシコへの孤独な一人旅に出るのだった・・・。
出演:トム・クルーズ、レイモンド・J・バリー、キャロライン・カヴァ、キーラ・セジウィック、フランク・ホエーリー、ジェリー・レヴィン、ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャー、トム・サイズモア、ヴィヴィカ・A・フォックス、リリ・テイラー、ウィリアム・ボールドウィン
★★★★★ アメリカのトラウマ
ベトナム戦争の復員兵(帰還兵)を描いたオリバー・ストーンによる社会派作品です。本来兵士というのは国のために自分を犠牲にして戦うという信念と自尊心を抱いて戦場へ向かいます。たとえ、戦場で敵を殺して一生悪夢を見るトラウマを抱えることになっても国に帰還すれば「君は正しいことをした」「国を守るためによく戦ってくれた」と勲章やパレードなどを通じて正当化され時間と共に癒されるものです。平和に慣れているとピンとこないですが、それほど「名誉」は大事なことらしいです。それがベトナム戦争は反戦運動と連動するテレビ戦争の幕開けでもあり「戦う意味」を失った戦いでした。「共産主義者」から「自由」を守るために自らの身体も犠牲にして戦ったはずなのに国民からは「人殺し」呼ばわりされ家族や友人にさえ理解してもらえず、更に味方や民間人を誤射した重い罪悪感を抱える苦悩の復員兵を当時人気絶頂だったトム・クルーズが自分の髪を抜きながら見事に演じています。アメリカ政府は当時の教訓を元に様々な兵士のメンタルケアを開発しましたが、それを上回る勢いの兵器の進化と複雑な情報環境の発展で今も戦争によるPTSDを解決するには到っていないようです。この映画を見ると現地で戦う兵士の心の傷がどういうものだったのか考えさせられます。
★★★★★ 反戦を訴える力作
反戦を訴える力作。主人公が高等学校卒業後すぐに海軍に入隊するまでのいきさつ、ベトナム戦争の現場での悲惨な経験、負傷してからの苦悩、苦しみから立ち直って反戦活動に活路を開くラストシーンと、戦争が主人公にもたらした悲哀を描く。学校では愛国精神のもと学業、身体形成の鍛錬を強いられ、家庭ではキリスト教の戒律のもと厳しい躾を受けた主人公が、友達のひきとめるのにも耳をかさず入隊していく場面では、この映画の鑑賞者もきっと重苦しい思いになることだろう。傷ついて帰国した彼が、「教会は国のために戦えとけしかけたが、殺すなかれというのが聖書の教えだろう」と嘆く場面では、宗教が政治に加担することの恐ろしさを考えさせられる。レイモンド・J・バリー演じる父親がとてもよい味を出している。出征経験のある父親は息子の入隊に賛成ではなかったが、息子や妻の熱意に押し切られる形で見送り出してしまう。この父親が帰国した息子を「生きていてくれてよかった」と受け入れる場面では、もらい泣きした。
★★★★★ 戦争を理解しようとするならみるべき!
いい映画だと思った。見始めてすぐにひきつけられ、終わりまで飽きずに見ることができた。特に、戦争がどれだけ不合理で矛盾に満ちたものなのかが強烈に伝わってきた。僕は生まれてから20数年、何一つ苦労なく生きてくることができた。苦労を重ねてきた人々のことを理解することは難しいのかもしれない。ましてや、戦争を実際に体験した人々のことを理解することは不可能なことであると思う。今でも現実に世界ではさまざまな紛争が起こっている。マスメディアでしか戦争を知ることができない僕たちは実際に紛争や戦争に巻き込まれている人々とは違い、傍観者であり批評家にすぎない。それでも、やはり、戦争や紛争などの難しい問題を考えていかなければいけない、と思った。政治家の言説やマスコミなどに踊らされるのではなく、だからといって理論的に精緻な学術書で勉強するだけではなく、自分を頼りに考えていくことが大切だと思った。
★★★★☆ 7月3日生まれのトム・クルーズが好演
この映画は、ベトナムからの帰還兵であるロン・コーヴィックの同名映画。ロン役のトム・クルーズの好演に惹かれます。この映画は、ベトナム戦争で下半身不随となったロンが、やがて反戦運動へと生き方を変えていく物語ですが、この種の映画が受けるのは、アメリカに負傷した帰還兵が大量にいたことや、ドロ沼化したベトナム戦争への批判が強かった、当時の社会情勢によるものだった思います。70年代にジェーン・ホンダとジョン・ヴォイドが共演した『帰郷』という映画がありましたが、この映画も同様のストーリーでした。二人は、この作品でアカデミー賞をとりましたが、『7月4日に生まれて』もアカデミー賞の監督賞などを受賞しています。
★★★★☆ トップガン主演の反戦映画
アメリカの中産階級が没落しはじめた時代背景の中、ロンは志願して兵士になった。周囲の地域社会と家庭の中では、物質主義の代わりに、名誉というプライドを重んじられて育ってきたからだ。一途な若者にとって、独立宣言の理想と社会的地位の向上という野心を満たせることは何と素晴らしいことだろう。然し、その全てはプロパガンダであり、偽善だった。彼は、それまで当たり前の様に享受し、愛していた健康な肉体と、家族そして友人を失っていく過程で、そのことに気付いていく。戦争に生き残ってしまった人間にとっての「戦後」はいかに長く感じられるものなのかーこれは、国と人種を問わないと思う。この映画はある意味で『プラトーン』の続編であると同時に、(モデルがあるにしても)半分はオリバーストーンの自伝にもなっている。戦争を起こす人間とシステムへの監督の関心は、その後『JFK』へと向かうことになるが、その文脈の前段として(こんな時代だからこそ)是非見ておきたい。
作品の詳細
作品名:7月4日に生まれて |
原作名:Born on the Fourth of July |
監督:オリバー・ストーン |
脚本:オリバー・ストーン |
公開:アメリカ 1989年12月20日、日本 1990年2月17日 |
上映時間:145分 |
制作国:アメリカ |
製作費:1700万ドル |
興行収入:1億6100万ドル |
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