ひとりの男の堅実な人生が一夜にして突如崩壊していくさまを、夜のハイウエーを車で走るトム・ハーディの圧巻のひとり芝居を通してスリリングに描き出した異色のサスペンス
ストーリー:夜、仕事を終えて建築現場を後にし、愛車に乗って帰宅の途に就いた建設会社のエリート社員、ロック(トム・ハーディ)。一大建設プロジェクトの着工を翌朝に控え、今晩は家に帰って、愛する妻子とともにサッカーをTV観戦するはずだったが、かつて一夜の過ちで彼と関係を持ち、妊娠した女性ベッサンから、破水をして病院に搬送され、いまにも赤ん坊が生まれそうとの緊急連絡が入り、ロックは大切な家庭や仕事を棒に振って病院へ向かう決心をする・・・。
出演:トム・ハーディ
★★★★★ よく出来た人間ドラマです
全編86分、ほぼリアルタイムで描かれる会話劇。類似作品として『リミット』や『127時間』あたりが思い浮かびますが、この手の映画にありがちな犯罪・サバイバル要素は無く、あくまで1人の男の身辺整理にフォーカスされています。最初のうちは何が起きているのかわかりませんが、電話での会話、時には独白で徐々に主人公をとりまく状況が明らかになっていく。主役のトム・ハーディはもちろんですが、受話器の向こう側の人々が良い仕事してます。声だけなのに様子が手に取るようにわかるのがすごい。駄目オヤジなりに自分の中の倫理や意地をなんとか突き通そうとする主人公でしたが、その代償はあまりにも大きかったという冷徹なストーリーも秀逸。ラストの子供との会話は胸が締め付けられました。
★★★★☆ 一台の車に閉じ込めた、豊かな人間ドラマ。
物語の核となるのは、愛情の無かった父親への主人公ロックの憎しみである。父親のようにはなるまいと心に決め、生真面目に生きてきたロックの只一度の過ちが彼を大きく揺さぶる。作品中で描かれるのは、父親の幻影を振り払うべく過ちを正面から乗り越えようとする彼の姿だが、残酷にも結果的には職を失い、妻に見放されるという事態に陥ってしまう。一度の過ちに全てを搦め取られてしまう無情の中で、生まれたての赤子の産声だけが救いの手を差し伸べているように思えた。トム・ハーディはワンシチュエーションという重圧の中で感情豊かに演技してみせたし、高速の幻想的な煌びやかさを表現した撮影の貢献度も大きいだろう。また吹替版特有の要素かもしれないが、ロックとドナルの仕事を巡るやり取りが非常にコミカルで、ドナルが仕事を理解しているふりをしたり、酒を飲んでいるのをごまかそうとしたりする様子は大いに笑いを誘った。シンプルな構成の中に、人間の様々な感情を凝縮・表現した良作。
作品の詳細
作品名:オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 |
原作名:Locke |
監督:スティーヴン・ナイ |
脚本:スティーヴン・ナイト |
公開:イギリス 2014年4月18日、日本 2015年6月27日 |
上映時間:85分 |
制作国:イギリス、アメリカ |
製作費:200万ドル |
興行収入:510万ドル |
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