くたびれた中年男性と若い娘の奇妙な恋愛模様を映し出す
ストーリー:現代のニューヨーク。かつてノーベル賞候補だった天才物理学者のボリス(ラリー・デヴィッド)も、今では社会から孤立し自堕落な日々をおくる気難しい初老の男。ある夜、ボリスの家に南部の田舎町から家出してきた娘メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)が転がり込み、そのまま居座ってしまう。2人は生活をともにするうちにひかれあい、年の差を乗り越えて結婚するが・・・。
出演:ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、ヘンリー・カヴィル、マイケル・マッキーン、コンリース・ヒル、オレク・クルパ、エド・ベグリー・ジュニア、ジェシカ・ヘクト
★★★★★ 深く大きなニヒリズムに裏打ちされたヒューマニズム
東欧系の名前(ウッディアレンはロシア=オーストリア系ユダヤ人の家系)、ブロンクス出身のニューヨーカー、かつて天才と呼ばれた老人(=監督自身は高校時代からギャグライターとして名を売り、若くしてコメディアンとして成功した)、うら若き少女との恋愛(=複雑な恋愛&家族関係に身を置いた監督自身、未だスキャンダルの渦中)等など、主人公ボリスには監督自身の姿が投影されているように見える本作。元・天才理論物理学者の主人公ボリスが周囲や観客に語る厭世的な言葉(=永遠の愛など無い、等)は人間に対する皮肉に満ちているが、本質的には正しいことばかり話している。だが、無知な少女との共同生活(=このあたりに監督の嗜好が出ているように、どうしても見てしまうのは計算づくだろう)、ニューヨークに押しかけてきた彼女の両親の変化などを通して、「人生は思うようにならない偶然の事件に満ちているし、変わらない愛などもこの世には無いんだが、それならそれで瞬間を思い切り生きて楽しめ!」というメッセージがポジティブに伝わってくる映画だ。ラストでボリスの語る言葉では、そんなポジティブなメッセージをそのまんま話しているが、しかしこの作品がその辺のポジティブ三流映画と違う点は、「人生はどうにもならない」「永遠の愛など無い」という冷たい事実が虚無的なまでに繰り返し語られ尽くす点にあるだろう。監督自身が抱えているニヒリズムの大きさと深さが、語られ尽くしたポジティブ・メッセージにインテリジェントな味わいを加えている。
作品の詳細
作品名:人生万歳! |
原作名:Whatever Works |
監督:ウディ・アレン |
脚本:ウディ・アレン |
公開:アメリカ 2009年6月19日、日本 2010年12月11日 |
上映時間:91分 |
制作国:アメリカ |
製作費:1500万ドル |
興行収入:3500万ドル |
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