ドラマ

麦の穂をゆらす風

アイルランドを舞台にしたイギリスからの独立戦争と内戦を圧巻のスケールでケン・ローチが描いた涙あふれる感動作

ストーリー:1920年、英国からの独立のため、アイルランドの若者たちは義勇軍を結成する。医者を目指してロンドン行きを決意していたデミアン(キリアン・マーフィー)も冷酷な英国軍の仕打ちに怒りをつのらせ、兄とともに闘いに身を投じる。そして和平条約を手にしたアイルランド。しかし、条約の内容を不服とし、完全な自由を求める者と条約を受け入れようとする者で国内は対立。内戦に発展していってしまう。デミアンは完全な自由を求めるが、兄は条約を受け入れようとし、兄弟は真っ向から対立してしまう・・・。

出演:キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー、リアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド、ロジャー・アラム

視聴者の声【Amazonレビューより】

★★★★★ 静かな良い映画

キリアン・マーフィが良い。彼の演技がこの映画を良くしたと思う。それにしてもアイルランドとイギリスの歴史は多分われわれ日本人には本質的には理解できない深い溝があるのだろうと感じる。同じキリアンマーフィ主演の「プルートで朝食を」も主人公がロンドンのディスコでアイルランドの爆破テロにあいアイルランド出身ということで犯人と疑われ警察で拷問を受ける。この2本全然 作風もまったく違う映画だけれど2本とも見ることをお推めする。きっとキリアンマーフィが好きになる。

★★★★★ 同じ島国ではあるものの、教科書で知ることと、映像で学ぶこと

イギリスとその周辺諸国については、教科書や参考書で「知識」として知ってはいたものの、この作品を見たことによって、そんな検閲で縛り付けられた教科書などより、よっぽど歴史の側面を思い知らされた作品でした。同じ島国でも、まるで境遇は異なる。ケン・ローチは好きな監督ではあるものの、この作品は背筋がゾッとする思いがしました。物語は兄弟2人を中心に進みますが、その周辺の出来事があまりにも大きすぎて、その歴史に翻弄される様がありありと映し出されます。もちろん、これもまた、歴史の側面に過ぎません。しかし、真摯にこの映画を製作し、そしてきちんと評価されるということは、まだまだ人間としても、映画を楽しむ人間としても、少しは救われた想いがしました。

★★★★★ 魂を揺さぶられる独立闘争悲史。監督の言葉にも感動。

映画を見終えた後、この映画はDVDを買おうとすぐ思った。アイルランドの独立闘争を描いた映画としては「マイケル・コリンズ」があるが、それに勝るとも劣らぬ傑作だ。期待していたが、それ以上に素晴らしい映画で06年度公開外国映画ではマイ・ベスト1。ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞した「マイケル・コリンズ」(96年)が伝説的ヒーローを主人公にしてより俯瞰的、政治的な視点で作られたのに対し、本作品はケン・ローチ監督らしく戦いに参加した普通の人々の視点で描かれておりヒーローはいない。戦いに志願する名もない青年達とそれを支える人々。それだけに物語はよりリアルで胸を打たれる。アイルランドがイギリスから完全に独立したのはなんと1938年でたった70年前。12世紀にその支配下に入り、700年もの間、厳しい植民地支配に苦しめられた。いまでも人口400万弱だが、19世紀半ばのジャガイモ大飢饉では餓死者が100万を超え、収奪と飢餓から逃れるように以降200万もの人々がアメリカに移民している。20世紀に入りようやく独立をめざした本格的な抵抗運動が始まるが、映画は独立戦争が最も激しかった1920年の南部コークの街が舞台になっている。この映画の監督は英国人のケン・ローチだ。英国ではかなり批判もあったらしい。ケン・ローチはこれまで英国の貧しいワーキングクラスの人たちをリアルに描いてきた監督で、私の好きな監督の一人だ。ケン・ローチ監督は、「この映画は英国とアイルランドの間の歴史を語るだけでなく、占領軍に支配された植民地が独立を求める、世界中で起きている戦いの物語であり、独立への戦いと同時に、その後にどのような社会を築くのかがいかに重要かを語っている」とインタビューで述べている。 また、カンヌ映画祭では、こうも語っている。「私は、この映画が、英国がその帝国主義的な過去から歩み出す、小さな一歩になってくれることを願う。過去について真実を語れたならば、私たちは現実についても真実を語ることができる。英国が今、力づくで違法に、その占領軍をどこに派遣しているか、皆さんに説明するまでもないでしょう」。過去の過ちを語ることは易しいことではない。けれど、その一歩を踏み出さなければ、世界はどうなるのだろう。監督は映画つくりの意図を明解に語っている。そう、過去についての真実を語れなければ、現実の真実を語ることが出来なくなってしまうのだ。キリアン・マーフイーが演じる若者は純粋であるが故に、悲劇的な死を遂げるが、対英講和派と徹底抗戦派の対立は今日に至るまで続いており、アイルランドの二大政党は対立した両派が政党になったものだ。

★★★★☆ 心を揺さぶられる。

完全な独立ではないからと闘争を続ける彼らにそんなにあせらずやっと手に入れた平和を楽しみ粘り強く徐々に状況を変えていけばいいよと言ってやりたかった。現在の平和で豊かなアイルランドは妥協の産物かもしれないけど無駄に命を縮めるよりいいでしょう。それでも映画のアイルランドもバックに流れる音楽も美しい。つらいけどいい映画だと思います。

★★★★☆ 傍観を許さない作品

娯楽の要素はないので娯楽大作が一番好きという人には全くおすすめできない映画ですが興味のなかったアイルランド近代史を解りやすく描く事で身近な出来事のように実感させられる映画です。そして地味ながらも単なる傍観を許さない強烈な映画です。描写が細かい分「そこにいてこれをちゃんと見ろ」と言われている感じです。「映画」としてはどこかに救いが欲しいものだけど、紛争に救いなどないという事をきっと思い知らされます。

★★★★☆ リアリティより作り手の生真面目さを強く感じてしまった

キリアン・マーフィーは好きだしアイルランドにも興味があるから嫌いな作品ではないけどケン・ローチの作風はあまり好きじゃないかもこういう題材を扱う作品にはもうちょっとシュールさとユーモアがほしい真面目な作品です。

★★★☆☆ どこにでもある物語

人間の争いなんて、当事者を変えながら場所変えながら同じ構図を繰り返しているだけだ、そんな歴史の皮肉をどこまでも冷徹に描いた作品だった。独立戦争後、イギリスの譲歩を引き出した条約を批准し、段階的に自由を勝ち取っていこうとする穏健派の兄と、今徹底して戦わねば祖国の自由と人民の豊かな生活は戻ってこないと信じる過激派の弟。現在のアイルランドを見れば、彼らはどちらも正しい。前者はアイルランドが今や完全な独立国であり、「住みやすい国」として世界的に評価を得ている事実を以って。後者は今でもイギリスとは「グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国」を指すという事実を以って。けれども、徹底的に間違っている。醜い、愚か、虚しい……そんな言葉ばかりが口を突いて出てくる。かつての同志をかつてのイギリスのように粛清していく兄も、かつての冷静さを忘れ、怒りと意地と反抗心のままに破滅を選んだ弟も。「悲劇」とか、綺麗事で片付けるべきじゃないと思う。「大英帝国」という共通で強大な「敵」がいた時は、ケン・ローチはその横暴さを常に描き、それに対する小さな反逆の狼煙である彼らを「英雄」であるかのように描いている。ただイギリス軍が去ってからは、気付けばカメラは突き放すように彼らを見つめている。彼らの正当性がこちらに伝わってくることはなく、おかげで誰にも感情移入できなくて、後半はひたすら映画が自分をすり抜けていく心地がした。

作品の詳細

作品名:麦の穂をゆらす風
原作名:The Wind That Shakes the Barley
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
公開:アメリカ 2006年6月23日、日本 2006年11月18日
上映時間:126分
制作国:イギリス、アイルランド、ドイツ、イタリア、スペイン
製作費:800万ドル
興行収入:2500万ドル
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