ドラマ

16歳の合衆国

恋人の弟を殺した16歳の少年・リーランド。世の中に溢れる悲しみに耐え切れず心を閉ざした彼の弱さや、悩みながら生きる人々の姿を描く青春映画

ストーリー:16歳の平凡な少年リーランド(ライアン・ゴズリング)は、ある日突然、障害者のライアンを刺し殺してしまう。ライアンはリーランドの恋人、ベッキーの弟だった。なぜ、少年は殺人を犯したのか?繊細さゆえに世の中にあふれる“哀しみ”に耐えきれず心を固く閉ざした少年と、苦しみ、悩み、少しずつ小さな罪を犯しながら生きていく人々。そして、第二の悲劇もまた、唐突に訪れる。

出演:ライアン・ゴズリング、ドン・チードル、クリス・クライン、ジェナ・マローン、レナ・オリン、ケヴィン・スペイシー、ミシェル・ウィリアムズ 、マーティン・ドノヴァン、ケリー・ワシントン、シェリリン・フェン、マイケル・ペーニャ

視聴者の声【Amazonレビューより】

★★★★★誰もが繰り返している罪とは

ある日、リーランドという青年が一人の少年を刺殺してしまう。被害者はライアン、リーランドの恋人の弟で知的障害を持っていた。凶悪犯罪を犯した子供『SFK』と見なされたリーランドは逮捕後、矯正施設の教官であるパールのクラスへと編入される。作品冒頭でリーランドに語られる友人の言葉、「人生は、断片の総和以上のものよ」。でも、それがずっと断片のままなら? リーランドはそう思った。作中にはリーランドの過去の記憶が現在の映像と共に断片的に挟まれている。父親との静かな確執。恋人ベッキーとの記憶、そしてライアンの記憶も。重いテーマを扱っている映画だが、映像に陰湿的な暗さは無い。映像は眩しいほどの明るさを持っている。ただ、その眩しさゆえにそれにどこか鋭さを感じさせるのは監督の意図だろう。もう一つ監督を賞賛すべき点は不安定なテーマを扱った安定した脚本だろう。それから、そこに登場する人間たちの不安定と「もろさ」、どの人間たちも一見気丈をよそおっていても確かな弱さを持っていることを描いている。それは砂の城を見ているようでもある。リーランドが持つ繊細さ、すべての哀しみを感じる心。私が今まで今を生きる人々に足りないものだと思っていたものだった。だが、リーランドはそれを持っていたために罪を犯してしまう。それは単なる弱さなのか?リーランドは自分の犯した罪を正当化しようとしない。彼がパールに語る自分のすべて、誰もが繰り返している罪。そして、記憶の最後の断片でリーランドはライアンの哀しみを抱きとめ、一つの約束をする。「世界には二つの見方がある」。この作品に感動が残るのは、そうしてリーランドから語られることが過酷ではあるが、確かな真実だからだ。私たちはそれを受け入れなければならないのかもしれない。私は受け入れたい。『補足する点で本作の日本語化は優秀とは言えない。特に吹き替えに関しては味わいに満ちた台詞が味気ないものにされていたり(最後の台詞「約束する」が「保障する」や冒頭の「人生は、その断片の総和以上・・・」という台詞も表現する言葉を変え、浅いものにされている)、リーランドを演じる演技者の喋り口がふてぶてしさを感じさせるため、劇場で日本語吹き替え版を見た方の中には、本作に不快感を覚えたかもしれない。邦題が「16歳の合衆国」ということで若者向けに改変されたことは窺えるが、これは大人にも重要な作品だと思う。そんな方にもこの機会に俳優陣の本当の声が聞ける、「英語音声日本語字幕」で鑑賞していただきたい。その方がリーランドの繊細さも、この作品の本当の魅力も見えてくる』

★★★★★ 誰もが理由を知りたがる

見方はふたつある。リーランドはライアンを殺したのか、それとも殺していないのか。リーランドは感情を押し殺した得体の知れない少年で、得体の知れない理由で人を殺したのかもしれない。けれど、もし殺していないとしたら、動機がある人物は誰か。なぜリーランドはその人物を庇うのか。物語の断片を繋ぎ合わせると、そこから見えてくるかもしれない、断片の総和以上の真実に、人は心を痛めるだろう。リーランドの父は、一般的に言われる良い父親ではないが、リーランドは彼から才能という大きな財産を受け継いだのだろう。あなたが信じている常識は正しいのだろうか。別の見方もあるのではないだろうか。問いかけが胸に突き刺さる映画だった。

★★★★★ のしかかる悲しみを追い払うために

ラストで初めて、彼の独白という形で彼の繊細な心の原点が語られる。祖母のお葬式で涙一つこぼさなかった父の姿に、リーランドは心に大きな傷を負った。なんと繊細な子供。起こった事態は変えられないことを悟り、あらゆる悲しみを押し殺して生きてきた。なのに彼はあの少年に哀れみの情を持ってしまった。少年を抱きしめて「Everything is OK.I promise.」そう慰めながら、一方で少年が感じる死の苦痛を思いやれなかった。少年の家族の哀しみを思いやれなかった。そこがまだ「16歳」ということだったのだろうか。しかし彼は「弱い人間」という言葉でごまかそうとはしなかった。事件の前も後も他人の心の中がよく見えている彼の哀しみが心に浸みた。「人生は断片の総和より大きい」という言葉、心に響いた。彼に実感させたかった。見終わってしばらく身動きできなかった。言葉に言い尽くせない思いが渦巻く。星10個。

★★★★☆ ほんとうにやさしいということ…

「ほんとうにやさしい」とはどういうことかを考えさせられる映画です。主人公は本当の意味で現実が見れないんだろうなぁ。出来るだけ、きれいなところを見ようとしているのだと思う。感じ方は人それぞれなので、それゆえに、いろんな人に見て考えて欲しいと思う映画です。悲しいし、割り切れないし、でも、すがすがしくもあるラスト。後味が悪いだけの人もいるかもしれない。だけど、何かが残るはず。

★★★★☆ 普通の少年の犯罪以上のものがほしい

出演者も語っているように脚本の完成度は素晴らしいと思いました。ただ、少年の犯罪が多発していると敏感に察している日本で見るには、「普通の少年が殺人を犯すのだ」というメッセージの目新しさはありません。もうそれは皆薄々気づいているからです。彼の罪の理由を、親子関係や彼の哲学やらに照らし合わせれば理解も出来ます。私的にはカミュの『異邦人』に近い感覚に思えました。リーランドが自分や他者見つめる目には説得力があります。少年犯罪の被害にあった人には腹立たしい内容でしょう。青春映画なんて言葉で片付けられるものではないでしょう。「普通の少年が殺人を犯すのだ」以上のものを描かないともう日本では説得力はありません。アメリカではどうかわかりませんが。

★★★☆☆ ある意味透明な心が、親しい人々を苦しみに突き落とす・・生ぬるい救いゼロ。

自分の恋人の弟(知的障害者)を殺すまでの葛藤が描かれていると思いきや、殺してしまってからの淡々とした心情・それに至るまでの彼なりの物の考え方が語られる構成で先ず驚いた。リーランドは人の感情の「哀」の部分の無意味さを子供の頃に理解してしまった青年。だからこそ他人の苦しみや哀しみに異常なまでに敏感で繊細・・自身は優しくナイーブで悪い青年ではない。しかし、そのあまりにも達観した内面は世の哀しみを見つめ続けるには弱すぎた、と私はそう思う。と、同時に己自身の世を見る尺度だけで障害を持つ人間を「哀しみの存在」と感じて殺す恐ろしさに身震いするような思い・・こう感じる私は「何事にも理由を求める大人」なのだな、と思った。彼が気が狂った殺人鬼なら幾分ほっとして見終える事が出来たから。だが「世の中には二つの見方がある」という言葉には惹かれる、理由などいらない、そんなものは最初から無い・・世の中は悲しみに満ちている。終わりの無い罪を静かに受け止め語らないリーランド。これは全然「普通の青少年がこうもあっさり殺人をおかしますよ」といった単純な映画ではないのではないか?現実の少年犯罪のどのパターンと当て嵌まるかは知らないが、確かに「理由はないんだ」で殺されては堪らない。と、同時にリーランドと同じ危うさを大人である自分の中にふと見つける瞬間が映画を見ている最中にある。(前述とは矛盾する意見ですが。)若い人より寧ろ大人に見て考えて欲しい作品だと思った。映画としては、過去をフラッシュバックさせていって現在に至り、それから未来へと無理無く繋がり構成が良い。只、ラストシーンは少々安易の繰り返し過ぎ。どう思われるかは見て頂かないと分からないけれど、ラストがややこの映画を陳腐にしてしまったと感じた。構成が良いだけに残念。ライアン・ゴズリングは、目だけで多くを語りお見事。これからが期待出来る。

作品の詳細

作品名:16歳の合衆国
原作名:The United States of Leland
監督:マシュー・ライアン・ホーグ
脚本:マシュー・ライアン・ホーグ
公開:アメリカ 2004年4月2日、日本 2004年8月7日
上映時間:104分
制作国:アメリカ
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