ドラマ

否定と肯定

ナチスによる大量虐殺は真実か、虚構か。ホロコースト、信念の法廷が今はじまった・・・

ストーリー:ユダヤ人の女性歴史学者リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は、「ナチスによる大量虐殺はなかった」と主張する歴史家アーヴィング(ティモシー・スポール)を批判し、名誉毀損で訴えられてしまう。提訴された側に立証責任があるイギリス司法制度のもと、彼女と弁護団はホロコーストの存在を証明するためアウシュビッツへ向かう。弁護団は生存者の証言には頼らない秘策で戦いに挑もうとするが、リップシュタットは猛反発。世界中が注目する前代未聞の裁判がついに始まるのだが・・・。

出演:レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール、アンドリュー・スコット、ジャック・ロウデン、カレン・ピストリアス、アレックス・ジェニングス、マーク・ゲイティス、アンドレア・デック

視聴者の声【Amazonレビューより】

★★★★★ 難しい内容でしたが素晴らしい映画でした!!

『ナイロビの蜂』で第78回アカデミー賞の助演女優賞に輝いたレイチェル・ワイズがユダヤ人大量虐殺=ホロコーストをめぐる裁判を争う歴史学者を演じる法廷劇。これは凄く期待していた作品で、初日の朝一番に見に行きました!朝から見るには些か重い内容でしたが、期待を裏切らない素晴らしい作品でした。1994年、イギリスの歴史家デビッド・アービングが主張する「ホロコースト否定論」を看過することができないユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、自著の中でアービングの説を真っ向から否定。アービングは名誉毀損で彼女を提訴するという行動に出る。訴えられた側に立証責任があるイギリスの司法制度において、リップシュタットは「ホロコースト否定論」を崩す必要があった。そんな彼女のために組織されたイギリス人大弁護団によるアウシュビッツの現地調査など、歴史の真実の追求が始まり、2000年1月、多くのマスコミの注目が集まる中、王立裁判所で歴史的裁判が開廷。「バケモノ」をホントの意味で裁くことはできるだろうか・・・。重々しい法廷シーンでは役者陣の演技力の高さが伺えました。物事に情熱的なのは良いですが、冷静さを失いがちなところが欠点かなと思いました。ですがそういった所がリアリティなのかもしれませんね。間接的にアウシュビッツを描くことで、より醜さや、愚かさといったものか浮き上がり、鳥肌が立ち背筋が凍る場面がありました。歴史を勝手に都合よく変えるのは言語道断なのですが、善悪ですべてを判断することの危険性を改めて考えさせられますね。

★★★★☆ 知性の不完全性が世界を誤らせる

ホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)はナチによって実行されたのか否か。何を今更寝とぼけたことを、議論の余地無いでしょ・・、と。ところが、公然とそれを否定する歴史小説家が現れ、その立場を非難した歴史学者の名誉棄損罪が法廷で争われる、という事実に基ずく見応えある作品です。つまり、ホロコーストを否定する実在の歴史小説家の主張の正当性が裁判で争われ決着したわけではないので、ホロコースト否定論は依然として残っていて、それを拠りどころに、近年世界的にネオナチの台頭が著しいと聞きます。実在の歴史小説家デヴィド・アービングのホロコースト否定論は膨大な資料と時間を駆使して書かれたある意味、完璧な歴史書であり、その主張を崩すのは容易ではないのである。例えて言えば、司馬遼太郎の書く歴史小説に異議を唱えるようなものであろうか。傑出した知性の誤った主張ほど厄介なものはないのである。我ら愚者は、それを超えるまともな知性が現れるのを待つしか手はなささそうだ・・・。

★★★☆☆ ドラマとしては?

よい映画だと思います。それを前提にして感想を述べると、ドラマ性に乏しいという印象です。おそらく、制作者は、作り物をできるだけ排除することが、このテーマに取り組む真摯さだと判断したのでしょうね。ですから、ハラハラ・ドキドキ感はありません。「敵」は自信過剰な俗物なので弁護士を雇わず、自説を主張するだけ。対するヒロイン(?)側は、すぐれた弁護団を構成し、法廷で活躍する弁護士も、百戦錬磨のキャリアを持ち、人間的にも尊敬に値する人物です。これでは、ドラマとしては一直線で、最後に裁判官が弁護士に質問するあたりだけが、多少とも緊張感を醸し出すぐらい。ですから、ヒロインを演じたレイチェル・ワイズは、そうとう演技に苦労したでしょう。なんたって「見せ場」がないのですから。途中、ホロコーストを経験した女性の訴えに同情するなどの場面はありますが、蛇足にしか思われません。弁護団の若い女性のわずかなエピソードなど、まったく必要ありません。この映画のもっとも重いところは、歴史の真実を、専門の歴史学者ではない法廷が裁かなければならないという問題と、こうした歴史修正主義者は、この程度のことではけっして自説をまげない、そしてその曲説は、時代を超えて生き残るという問題を提起しているところにあると思います。歴史学は、史料の読み込みと、史料批判、そしてその解釈の積み重ねでしか語れないものだと思いますが、それをせず、従来の歴史学の積み重ねた成果を自分に都合よく再構成して、小説だか評論だかわからない作品にしあげて自己主張する物書きはわが国にもたくさんいます。この映画は、「対岸の火事」ではありません。映像も綺麗で、よい映画です。

作品の詳細

作品名:否定と肯定
原作名:Denial
監督:ミック・ジャクソン
脚本:デヴィッド・ヘアー
公開:アメリカ 2016年9月30日、日本 2017年12月8日
上映時間:107分
制作国:アメリカ、イギリス
製作費:1000万ドル
興行収入:920万ドル
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