ドラマ

バリー・リンドン

鬼才スタンリー・キューブリックが映像表現の可能性を極めた歴史劇

ストーリー:アイルランドの農家の息子バリー(ライアン・オニール)は従姉のノラ(ゲイ・ハミルトン)と恋に落ちるが、イギリス軍のクイン大尉が現れてノラとの結婚話を進める。バリーはクイン大尉(レオナルド・ロッシーター)に銃での決闘を申し込んで勝利し、友人グローガン(ゴッドフリー・クイグリー)の勧めで村を出る。放浪生活を続けて一文無しになったバリーは、立ち寄った村でイギリス軍の兵員補充に志願し、戦場でグローガンと再会する。しかしグローガンが戦死して辛くなったバリーは、軍隊から脱走しイギリス軍の将校に成りすます・・・。

出演:ライアン・オニール、マリサ・ベレンソン、ゲイ・ハミルトン、レオナルド・ロッシーター、アーサー・オサリヴァン、ゴッドフリー・クイグリー、ハーディ・クリューガー、パトリック・マギー

視聴者の声【Amazonレビューより】

★★★★★ 蝋燭の下での博打シーンがすべてを物語る

この映画は,あらゆる意味で風変わりです。原作はそれほど優れた作品とは思われませんが、それが映画になると個々の登場人物の人間としての生き様のようなものが明瞭に映し出され、いろんなことを考えさせられる内容のものに見事に変容しています。一般に戦争映画は国の指導者や将軍の栄光みたいな視点からのみ描かれがちです。しかしこの映画では、当時の戦闘シーンについて隙さえあれば脱走したがる末端の汚らしい兵隊達の視線で描かれている部分が多く、戦争の真の悲惨さを描き出しています。また「待ち伏せ攻撃」を受けるシーンでは現代ではとても待ち伏せとは思えない状況の中で(指揮官の感覚としては)待ち伏せとして扱ってしまうことの異常さあるいは滑稽さが上手に描写されており、戦争というもののもつ非人間性がよく分かります。戦闘そのものの事実関係は、おおむね史実に基づいているようです。そしてこの映画の圧巻は何と言っても本当に蝋燭の光だけで撮影したと言われる博打シーンです。ここでは当時の貴族達の薄気味悪い化粧(日本の貴族もオハグロをしていたのと同じ。)が歴史に忠実に再現されています。まるでホントホルストの世俗画「デュオ」(モントリオール美術館所蔵)の中にある暗闇と光との世界がそのまま再現されているかのようです。この蝋燭の光の中での撮影は,非常に特殊なカメラでなければ実現できなかっただろうと言われており、キューブリックがどうしてそのような特殊なカメラを利用できたのかという謎も話題となりました。人間の野望と挫折、理想と現実、建前と本音、そして虚飾と実相とを抉り出す良い作品だと思います。

作品の詳細

作品名:バリー・リンドン
原作名:Barry Lyndon
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
公開:アメリカ 1975年12月18日、日本 1976年7月3日
上映時間:185分
制作国:アメリカ、イギリス
製作費:1100万ドル
興行収入:3100万ドル
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