本物の暴力を教えてやる
ストーリー:荒れた公共団地に一人で暮らす老人ハリー・ブラウン(マイケル・ケイン)。入院中の妻を見舞い、最後の親友レナードとパブでチェスをする静かな毎日。しかし公共団地はドラッグの売人やギャング団の抗争が相次ぐ危険な地区。彼らは高速道路下のトンネルにいつも巣食っていた。ある日、妻の危篤の知らせを受けたハリーはトンネルを通るのをあきらめたために妻の最期を看取れなかった。さらにギャング団に嫌がらせを受けていたレナードも彼らに惨殺されてしまう。怒り、哀しみ、そして復讐・・・。かつてIRAと戦った屈強な元英国海兵隊であったハリーの戦いが始まる・・・。
出演:マイケル・ケイン、エミリー・モーティマー、チャーリー・クリード・マイルズ、デイビッド・ブラッドリー、イアン・グレン、ベン・ドリュー、ジェイミー・ダウニー、ジャック・オコンネル、リー・オークス、ジョセフ・ギルガン、ショーン・ハリス、リアム・カニンガム
★★★★★ ケン・ローチ監督とはまたひと味違う社会派映画
マイケル・ケインの抑えた演技もとても良いが、この映画のテーマは荒廃しつつあるイギリスの治安への憂いだと思う。住み慣れた団地の地下道。普通なら、目的地への近道として誰もがごく日常的に利用できるべきものだ。しかし、実際は素行の悪い若者の溜まり場になっており、家族が危篤の時にも通るのをためらう程の危なさ。警察はも見廻りにも来ず、「どうせ、どうしようもないロウアークラス連中の地域」とほったらかし。親達も悪い子どもを叱ろうともしない。(叱れるレベルではないが…。)こうして、貧困や無知はズルズルと次世代に受け継がれて行く。主人公の通い慣れたパブの店主さえ、悪に染まっている。麻薬・銃・暴力。「なんとかしないと、このままではだめだ!」この声が人の形をとったのが、老紳士の姿をした主人公なのだ。この映画の原題が『ハリー・ブラウン』であることがそれを表している。邦題とは全く重みが違う。この映画は単なる痛快娯楽映画ではない。イギリス社会の暗い部分を悲しむ、重たい映画である。
作品の詳細
作品名:狼たちの処刑台 |
原作名:Harry Brown |
監督:ダニエル・バーバー |
脚本:ゲイリー・ヤング |
公開:イギリス 2009年11月11日、日本 劇場未公開 |
上映時間:103分 |
制作国:イギリス |
製作費:730万ドル |
興行収入:1000万ドル |
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