人を噛み殺した記憶は、決して消すことができない
アイルランドの新人監督デヴィッド・フレインが新たに創造する、ゾンビ・ウイルスのパンデミックが収束した“その後”を描く異色の近未来スリラー
■感染系ゾンビがもたらした終末的厄災の“その後”とは・・・??
感染系ゾンビがもたらした終末的厄災の“その後”を描いた作品には、『28日後…』の続編『28週後…』などいくつかの前例があるが、自作のオリジナル脚本で鮮烈な長編デビューを飾ったフレイン監督は、人種差別、宗教対立、移民問題などによって分断された現代社会の状況を生々しく反映。さらに元感染者=回復者がゾンビだったときの忌まわしい記憶を保ち、耐えがたいPTSDに苛まれている設定を加え、限りなくシリアスにしてリアルなホラー映画を完成させた。不寛容な社会で行き場を失っていく登場人物たちの苦悩に満ちたサバイバル・ドラマ、そして凄まじい緊迫感がみなぎるクライマックスのディザスター・パニックからひとときも目が離せない。
ストーリー:人間を狂暴化させる新種の病原体、メイズ・ウイルスのパンデミックによって大混乱に陥ったアイルランド。6年後、治療法が発見されたことで秩序を取り戻し、治療効果が見られない25%の感染者は隔離施設に監禁され、治癒した75%は“回復者”として社会復帰することになった。しかし、人間に戻った回復者=元感染者たちは、ゾンビだった時の記憶は消えず、耐えがたいPTSDに苛まれている。膨らむ不安と恐怖は世界を再びカオスへと引き戻す恐れがあった・・・。
出演:エレン・ペイジ、サム・キーリー、トム・ヴォーン=ローラー 、スチュアート・グレアム 、ポーラ・マルコムソン
★★★★★ 伝えたいメッセージ性がとてもわかりやすい。見入ってしまうヒューマンドラマ。
ゾンビ系の映画はホラー映画として定番ですが、パンデミック終焉後の世界で、回復者・それを受け入れる人・排除しようとする人、それぞれの立場の気持ちや葛藤がしっかりと描かれ、ヒューマンドラマと言える映画だと思います。まさにありそうでなかった映画というか、とにかく素晴らしいです。改めて恐ろしいウイルスが蔓延した世界のことを考えると、どのようにして元の世界に戻していくのかは、答えの難しい問題ですね。ただ、お互いがお互いを生かし合うことを考えない世界である限りは、新型コロナの問題や、これと同じような問題は大小関わらずあり続けるのかと思いました。
★★★★☆ コロナ渦で観る
2017年アイルランド・フランス合作のゾンビホラー作品。ゾンビ化ウイルスがヨーロッパで大流行、その後治療法が発見され感染者の75%は治癒回復者となった。しかし回復者は感染時の記憶が残りPTSDに苦しみ、差別を受け社会復帰が困難な状況。加えて治療効果のなかった25%の感染者の隔離状態が続くなか、経済破綻した国や偏見視の社会がどう対応していくのか。コロナ渦で感染症に対する世間の認識が一変したなか、絵空事に過ぎないともいえない、単純に楽しむだけに留まらない興味深い作品になった。
作品の詳細
作品名:CURED キュアード |
原作名:The Cured |
監督:デヴィッド・フレイン |
脚本:デヴィッド・フレイン |
公開:アイルランド、フランス |
上映時間:95分 |
制作国:アイルランド 2018年4月20、日本 2020年3月20 |
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