過去をひもといていくにつれて、からまりあっていく記憶の糸。父親と抱き合っているのは娼婦なのか、母親なのか・・・
ストーリー:ロンドンのとある駅に降り立った一人の男・デニス(レイフ・ファインズ)。彼は精神療養施設を退院させられ、20年ぶりに故郷へ戻ってきたのだ。社会復帰ができるまで患者を預かるという施設で、ウィルキンソン夫人(リン・レッドグレイヴ)に迎えられ、さっそく部屋をあてがわれたデニスは鞄の中から1冊のノートを取り出す。これには彼の陰惨な過去が書き綴られていた。少年時代のデニスは、糸を張りめぐらせるクモの話が大好きだったので母親から“スパイダー”と呼ばれていた。配管工の父はいつもパブに入り浸り、やがてパブの娼婦イヴォンヌと不倫の関係になってしまう・・・。
出演:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーン、ブラッドリー・ホール、リン・レッドグレイヴ、ジョン・ネヴィル、アリソン・イーガン、サラ・ストックブリッジ
★★★★☆ クローネンバーグらしい渋さ満点
クローネンバーグ世界を知らずに、キャッチ・フレーズの「仕掛けた」「記憶の罠」といった言葉に引かれて見てしまった人からは、オチが見え見えだという意見も出ているようだが、それは監督(と原作者)の狙いを誤解しているに過ぎないだろう。普通にトリッキーなサスペンスを作るはずのない人である。2役を演じるミランダ・リチャードソンの評判がいいが、実は2役にとどまらなくなった瞬間のシーンに驚かされた。ある意味ここがこの映画のオチと言えるのではないだろうか。過去だけでなく現在においても過去の記憶を引きずった怖ろしいことが起こるのでは、と思っていたのだが、その後映画はあまりにも地味に締めくくられる。いかにもクローネンバーグらしいやりきれないような暗い余韻を残しながら・・・。
★★★☆☆ 眩暈
主人公デニス・クレッグ(レイフ・ファインズ)の思考を追う形で淡々と話が進行していきます。彼の回想は現実と虚構、現在と過去が入り混じり、視ている者に眩暈を起こし、蜘蛛の糸に絡め取られるかのようにストーリーに引きずり込まれます。「スパイダー」というタイトルでありながら、蜘蛛は一匹も出てきません。蜘蛛に暗示される主人公の奇癖、話の構成。この映画はとても暗示的でどう解釈するかは見る人次第、人によっては「訳が分からない」と思ったり、淡白な演出に物足りなさを感じるかもしれません。個人的には好きですが、好き嫌いの分かれる作品でしょう。
作品の詳細
作品名:スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする |
原作名:Spider |
監督:デヴィッド・クローネンバーグ |
脚本:パトリック・マグラア |
公開:カナダ 2002年12月13日、日本 2003年3月29日 |
上映時間:98分 |
制作国:カナダ、イギリス |
製作費:1000万ドル |
興行収入:580万ドル |
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