犯罪がつなぐ、家族のきずな
犯罪で生計を立てる親族に引き取られた少年の葛藤を描くクライムドラマ
ストーリー:オーストラリア、メルボルン。母ジュリアと2人暮らしをする17歳の高校生ジョシュア(ジェームズ・フレッシュヴィル)は、その母が麻薬の過剰摂取で死亡したことを機に、長く疎遠だった祖母ジャニーン(ジャッキー・ウィーヴァー)のもとに引き取られた。祖母の家には、ジュリアの兄弟でジョシュアの叔父にあたるアンドリュー、クレイグ、ダレンの3人が同居していた。一見、家族思いで温厚な人物に見える彼らだったが、実は全員が銀行強盗や麻薬の密売など、あらゆる凶悪犯罪で生計を立てており、ジャニーンもそんな息子たちの犯罪を裏で仕切っていた。アンドリューの親友バリーも、一家と家族ぐるみの付き合いをしながら多くの犯罪を計画している。他に行くあてもないジョシュアは、やがてそこでの生活に馴染み、高校のガールフレンド、ニコールを家に連れてくるまでになるが、いつまでも一家の犯罪に無関係でいることなどできなかった・・・。
出演:ジェームズ・フレッシュヴィル、ジャッキー・ウィーヴァー、ベン・メンデルソーン、ジョエル・エドガートン、ガイ・ピアース、サリバン・ステイプルトン、ルーク・フォード、ローラ・ウィールライト
★★★★★ Road To Hell
母親の死により、17歳の少年は他に頼る当てがないため、祖母のいる犯罪者一家のもとに引き取られる。証人保護で一旦、離れて暮らすものの・・・。若く力がないために最悪な状況に陥ってしまう光景を描写したリアルな人間ドラマ。
★★★★★ 圧巻のクライムドラマ
最近公開されたデヴィッド・ミショッド監督の新作『奪還者』がしっくりこず、前作に比べると云々~、という感想がチラホラ見られたので、遡って本作を見てみました。見て納得、長編映画デビュー作とは思えぬ完成度の高さに驚かされました。なかなかこれと同等、もしくは上回る作品を撮るのは難しいかな、と。ヘロインの過剰摂取が原因で亡くなった母方の祖母に引き取られた17歳のジョシュア・コディ。しかし祖母の一家は、様々な犯罪に手を染める犯罪一家だった・・・。登場人物のほとんどが道徳的観念が欠落したキャラクターで、一般人から見れば”非日常”ともいえる光景が”日常”として存在している恐ろしい世界観。そんな中で、主人公のジョシュアが翻弄される姿が描かれます。そして彼もまた、自分の居場所を確保するために・・・クライマックスは衝撃的でした。デビュー作でありながら、これほど重厚な世界観を構築したデヴィッド・ミショッド監督。個人的に「奪還者」はイマイチでしたが、今後、本作のような作品を生み出してくれることを期待しています。
★★★★☆ 野獣の掟、それは混沌
なにも動じることもせず、救命士が来るのを待ちながらヘロインの過剰摂取で息絶えた実母の隣でテレビを見る主人公ジョシュアの姿で始まるこの映画、まるで「ママンが死んだ」で始まるカミュの「異邦人」を連想するプロローグでした。犯罪でしか生きれない文字通りの「アニマル・キングダム」の実家でジョシュアが善と悪に戸惑う姿は実にリアルで見ているこちらもハラハラさせるほどセンシティブな表情です。やがて窮地に立たされていく一家はその女王とも言えるジャッキー・ウィーヴァーが仕掛ける姦計は見ているこっちが殺意を抱くほどの極悪ぶり。やがて悲しくも、確かな決断と選択をすることで少年から大人へと変わるジョシュアの姿にエンドクマークが終わるまで釘付けにされるのは間違いありません。
★★★★☆ 日常化する「悪」
1988年にメルボルンでビクトリア州警官2名を射殺し、無罪判決を受けたトレヴァー・ペティンギルとその家族に材を得て作られたオーストラリア映画。タランティーノが絶賛するだけあって重厚な良い映画だった。兄弟みんなヘロイン中毒、母親の目の前で鼻からヘロイン吸引してもお咎め無し。どころかお茶を飲むかのごとく可憐にスルー。街で喧嘩売られたら銃で脅してヘラヘラ、絶望的な家族の絶望的な話。悪が日常化しすぎて、違和感なくどうしようも無い家族の様を静かに淡々と見せつけられていくので、鑑賞側もその「悪」に麻痺する。この家族って冷静に見たら最低最悪だよね?っていちいち確認したくなる。確認しないとこっちがくるっているかのように思わせるほどこの映画ではDQNを極めた家族たちが淡々と描かれている。DQN系という言葉では語り尽くせないほど、いや、そんな可愛いもんじゃ無いって程のろくでなしだらけの家族。実話をベースにしてるって言うんだからさらにその絶望感は増殖する。主演の少年の終始物憂げな演技もさることながら、アカデミー賞助演女優賞にノミネートしたジャッキー・ウィーヴァー(世界にひとつのプレイブックでロバートデニーロの嫁役)の「悪いおばあちゃん」ぶりは、「悪い」という言葉では表現しきれないほど、その表情は終始不気味さを醸しだし、完璧と言っていいほどの怪演だった。ラストシーンは衝撃だが、その衝撃すらすぐに日常化、何事も無かったかのように、「これが私たちにとっては正解なんだわ」みたいな顔をおばあちゃんがして、静かに過ごしていくんだろうな、何て納得させられてしまう静かだけど、エネルギーを持った(それも黒い、とても強い)映画だった。
作品の詳細
作品名:アニマル・キングダム |
原作名:Animal Kingdom |
監督:デヴィッド・ミショッド |
脚本:デヴィッド・ミショッド |
公開:オーストラリア 2010年6月3日、日本 2012年1月21日 |
上映時間:112分 |
制作国:オーストラリア |
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