老人と猫の旅を通して人生の哀歓が情感豊かに描かれた、名匠ポール・マザースキー監督の傑作ロード・ムービー
ストーリー:愛猫のトントと一緒にニューヨークのマンハッタンに住む72歳の老人ハリー(アート・カーニー)は、行政の区画整理のためアパートから強制的に立ち退きを迫られる。やむなく彼はトントを連れて長男の家に行ったものの、そこで嫁に気兼ねし、結局実娘シャーリー(エレン・バースティン)を頼ってシカゴに赴くことに。その旅の途中で拾ったヒッピー少女や、初恋の女性との再会。さらにはアリゾナ、ロスと旅を続けることになるハリーは、さまざまな人々と心通わせていくのだが・・・。
出演:アート・カーニー、エレン・バースティン、チーフ・ダン・ジョージ、ラリー・ハグマン、ジェラルディン・フィッツジェラルド、メラニー・メイロン、ハーバート・バーゴフ、クリフ・デ・ヤング、アーサー・ハニカット、バーバラ・ローズ
★★★★★ ハリーの愛猫トントに降参。
老境を迎えたハリーが、住み慣れたニューヨークのアパートから、区画整理のため追い出されることになる。そこから、彼が愛猫トントを連れ、自分の3人の子供たちを訪ね歩くことになり、その行程での出来事を描いたロードムービー。ロードムービーに不可欠なもののひとつが出会い。この物語でも、ハリーが個性的な人たちと出会い、思いがけない経験をする姿が、ユーモアたっぷりで楽しい。そして、ハリーと子供たちとの縮まらない距離、友人との別れ、過去に愛した人との再会が切なさを交えて描かれ沁みてくる。巧みなストーリーにさらに彩りを添える、愛猫トントの描写が素晴らしい。猫好き必見!トントの最初のショットの表情から、絶妙なタイミングの鳴き声の挿入や、ハリーの独白シーンで、車のダッシュボードでジッとしている時のたたずまいなどに思わずにっこり。冒頭で、トントと同じ目線でトントの動きを追うシーンや、不安を語る息子を励ますハリーの前に何気に現れるところなどが本当にうまい。トントは、この物語全体を照らす灯火であり続け、見ているこちらの心も照らし続けてくれる。ハリーもトントも自立心旺盛やけど、それでも、誰か・何かと、そして互いが寄り添いあう姿は本質的で印象的。ハリーが家探しをする時出会った、勝ち気な老女が夫について語るシーンなどはその象徴のよう。ハリーもトントも愛してやまない作品。
★★★★☆ 大事なことを見失っていないか
ストーリーも設定も全く違うが、観終わって感じる温かさは、「寅さん」のそれと似た感じがした。主人公の老人ハリーの行動は、人間同士,あるいは生き物同士の関係に重きを置き、社会の一般常識は二の次。最初、この行動を観ていてストレスを感じた。しかし、徐々に、ハリーの行動の方が自然で、社会の方が人間,生き物らしさから遠ざかっていると感じ始めた。今の社会に何の疑問も持たずに生きていていいのだろうか、何か本当に大事なことを見失っていないだろうか。そんな風に感じさせる作品だと思う。
作品の詳細
| 作品名:ハリーとトント |
| 原作名:Harry and Tonto |
| 監督:ポール・マザースキー |
| 脚本:ポール・マザースキー、ジョシュ・グリーンフェルド |
| 公開:1974年8月12日 |
| 上映時間:115分 |
| 制作国:アメリカ |
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