抑えがたい欲望と葛藤。緊張に満ちた、日常のドラマ
ストーリー:オックスフォード大学の哲学教授スティーブン(ダーク・ボガード)は、オーストリアからの留学生アンナ(ジャクリーヌ・ササール)が、恋人がありながら、彼の同僚でテレビ評論などして名を売る教授チャーリー(スタンリー・ベイカー)と交際しているのを知って驚く。彼女に対し妄執を覚えたスティーブンは、恋人の事故死で沈んでいる彼女に取り入って情交を結ぶが・・・。
出演:ダーク・ボガード、スタンリー・ベイカー、ジャクリーヌ・ササール、デルフィーヌ・セイリグ、マイケル・ヨーク
★★★★★ 大人の映画
赤狩りを逃れてイギリスに亡命したジョゼフ・ロージが残した作品で異彩を放っていたのは、後にノーベル文学賞を受賞することになった、ハロルド・ピンターの脚色作でした。映画好きだったピンターが、影響を受けたのがルイス・ブニュエルで、シュールレアリズムへの興味が、後に演劇に創作の場を見つける切っ掛けになりましたが、本作も、中年の大学教授が若く美しい女子生徒に入れあげてしまう、原作の通俗性を薄めるために、リアリズムな表現を避けて、観客に想像力を奮起させるような情報の簡略化が試みられて、不条理感を醸し出しています。若い頃に観た作品を見直して、新しい発見をすることが多々あり、作品の印象が変わってしまう事がよくあるのですが、 本作を初めて見たのが高校生の頃で、人生の折り返し点を迎えて死を意識する年代に入った中年男が、失われた若さへの羨望から女子生徒に恋愛感情を持つが、今まで築きあげてきた地位や家庭を壊してまで一線を越えられないジレンマに苦しむ様は、当時の私には、理解出来ていなかったと思います。特に、女子生徒役のジャクリーヌ・ササールの小悪魔的魅力は、大人にならなければ分からないでしょう。
作品の詳細
作品名:できごと |
原作名:Accident |
監督:ジョセフ・ロージー |
脚本:ハロルド・ピンター |
公開:イギリス 1967年2月6日、日本 1969年8月2日 |
上映時間:105分 |
制作国:イギリス |
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